インターンシップ活用事例:一般社団法人 十和田奥入瀬観光機構様

青森県十和田市の地域DMOである十和田奥入瀬観光機構様は、2020年の冬にインターンシップ生の受け入れを行いました。本記事では、観光機構のご担当者様と参加したインターン生たちに、今回のインターンプログラムについてのお話を伺いました。

ぜひ人材活用・人材育成のヒントとしてご活用ください。

インターンシップ導入の目的

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの大学生たちがオンラインでの授業を余儀なくされ、学びの場や人との交流の場が少なくなっていました。一方で、十和田奥入瀬観光機構では、冬のイルミネーションイベントの開催に向けた人手の確保が課題でした。そこで大学生たちに成長の場を提供すると共に、人手不足も解消できるインターシップは、双方にとってメリットがあると考え、プログラムの導入を決めました。

募集について

インターンシップの受け入れを決めた後は、募集要項とチラシを作成し、近隣の大学のインターンシップ窓口を回りました。

 

  •   求期間は最低2週間以上(1ヶ月以上の方は往復交通費支給)
  •   週休2日、シフト制、基本は7時間/日
  •   十和田湖畔の寮を無料で提供
  •   WiFi完備のワーケーション施設から、オンライン授業の受講可
  •   マーケティング業務補助
  •   イベントの企画運営、ガイド業務
  •   その他観光機構の業務補助 など

※実際の募集チラシはこちらを参照

コロナ禍でインターンを許可していない大学もあったことと、9月からという短期間の募集だったこともあり、最終的には観光系を学ぶ学生を中心に、4名のインターンシップ生の受け入れとなりました。

受け入れについて

受け入れにあたって必要だったことは、滞在場所の確保です。雪が降る土地で、市街地からも距離があるため、防寒対策のサポートと移動時の車の手配も行いました。

受け入れ後の業務の進め方については、当初はイベントの運営業務が中心で、他の業務については各職員が持っている仕事のうち、インターン生にも任せられそうなものをリストアップして割り振るという形で進めていました。しかしながら、社内のミーティングなどにもインターン生を参加させていくうちに、議題としてあがった社内で後回しになっている業務などを、インターン生自らが積極的に拾ってくれ、想定以上に様々なことに取り組んでくれました。

インターン生の取り組み

ここからは実際に取り組んだ具体的な内容について、インターン生たちに伺いました。

光の冬物語(イルミネーションイベント)

イベント開催前の準備では、イルミネーションの取り付けや、マニュアルの作成、チケットの営業を行いました。開催期間中は受付・誘導業務を行いました。また、同時開催の「十和田湖ラーメン物語」での接客対応も行いました。

各種アクティビティの体験

氷瀑ツアーやスノーシューツアー、冬カヌー体験など、既存のアクティビティに参加しました(モニターツアー)。お客様目線で率直な感想を伝えることで、今後のアクティビティの品質向上に繋げられたと思います。

職員研修への参加

十和田奥入瀬観光機構が職員向けに月に一度開催している「ツーリズムプロデューサー養成講座」に参加しました。観光資源の洗い出しや、ペルソナシートを用いたターゲットの設定、ターゲットが必要としている情報や情報発信の方法などについて、職員と一緒のグループに入ってディスカッションを行うことで、集客課題に対するアプローチ方法を学びました。

教育旅行コンテンツ開発の体験

地域の特産品である「ひめます」を活用した教育旅行コンテンツを開発するというテーマでワークショップを行いました。孵化場の見学や、歴史的背景などを学習した後、グループに分かれてディスカッションや発表を行い、教育旅行コンテンツの開発について学びました。

十和田湖写真集の活用案の検討

寄贈していただいた写真パネルと写真集2000部の活用方法を検討しました。SNSコンテストの受賞作品と写真パネルを同時に展示する案や、写真集に付ける帯を作成し様々な観光施設に設置する案など、様々なアイデアが出ました。

寄付いただいたレモンサワーの活用方法の検討

寄付いただいたレモンサワーを活用するために、どのような方法があるかを検討し、配布方法を企画しました。十和田湖のシンボルである乙女の像とレモンを繋いだエピソードを記載したオリジナルのラベルを添付し、イルミネーションイベントの来場者に無料で配布いたしました。

SNSフォトコンテストの企画

近隣住民のマイクロツーリズム促進を目的とした、SNSフォトコンテストの企画を行いました。「十和田の冬の宝さがし」をテーマに、地元の子供たちに十和田の新しい魅力を発見してもらうという、これまでとはひと味違う企画に落とし込みました。審査方法や景品などを決めるのに苦労しました。2月から実施予定です。

動画制作やSNSでの発信

インターン生4人でインスタアカウントを立ち上げ、十和田湖の日常風景について発信を行っています。また、冬のイベントに関する動画の制作も行い、SNSで発信しました。

インターン生の声

4名のインターン生たちに、インターンに参加した感想や気づき、今後の目標などについて伺いました。

佐藤さん(千葉県から参加)
とても自由な環境で、営業・企画・分析など、様々なことを経験できました。また、DMOの職員や地域には、様々なバッググラウンドを持つ方がおり、多くのステークホルダーによって地域が成り立っていることを知りました。そのため、お互いがしっかりと話し合うことの重要性を改めて感じました。旅行会社への就職が決まっていますが、将来的には企画・添乗などを通して十和田エリアに送客ができればと思っています。また、旅行会社にて経験を積んだ後、ゆくゆくは十和田奥入瀬観光機構の理事長に…という道も考えています。


工藤さん(ノースアジア大学から参加)
「十和田湖ラーメン物語」や「光の冬物語」の業務を通して、改めて人と接するのが好きだと実感しました。また、地元の方々とコミュニケーションを取る中で、DMOが何をしているか分からないという声が上がっており、地域住民の方や地元の企業との共同事業を行うなど、地域に寄り添った地域づくりが必要だと感じました。地域振興を行う上で重要なのは稼げるかどうかだと思っているので、まずは旅行会社に就職して稼げる観光のノウハウを学び、将来的には地元の地域振興に貢献できたらいいなと考えています。


道田さん(公立小松大学から参加)
今回のインターンシップを通して、今までしたことのない体験をすることができたと実感しています。様々な企画やミーティング、アクティビティなどに参加し、十和田の魅力を知りましたが、その魅力を来てくれる方々だけではなく、地元の方にも知ってもらうにはどうしたらよいのかを考えるのはとても難しかったです。ただ、それを考えることは楽しく、やりがいを感じました。また、十和田で関わった方々は皆さん温かくて、来て良かった、出会えて良かったと思います。十和田での生活はとても濃い経験で、自身も十和田のファンになりました。他の季節にも絶対に来てみたいと思います。


藤田さん(公立小松大学から参加)
地域の方々やDMOの職員の皆様のご厚意がとても有難く、貴重な体験を沢山させていただけました。やってみたいことに積極的に取り組める環境のおかげで、今までにない壁にぶつかることもあり、自分の得意なことと苦手なことを認識することができました。インターンに参加する上で、企画力を上げたいという目標がありましたが、実践を通して、何のために・誰に・どのようにアピールすることが効果的か、またどのような評価や利益に繋がるかなど、分析的かつ多様な視点から企画を考えられるようになりました。今後は、学んだことを活かして、地元の伝統産業の持続的な発展に貢献していきたいと思っています。

職員の声

十和田奥入瀬観光機構で働く職員の方に、今回インターン生を受け入れた感想を伺いました。

職員たちにとって、インターン生の受け入れは非常によい刺激になりました。職員のうち半数は行政からの出向者のため、アイデアを生み出すのが得意ではない堅実家タイプの方が多いです。そのため、インターン生たちが楽しそうに新しものを作り上げていくのを見て、失っていた大事なものを思い出した気がします。

地元の人たちとの付き合い方に関しても見習うべき部分があるなと思いました。大人だとどうしても忖度してしまうところでも、彼らはまっすぐ入っていくのが上手です。例えば、モニターツアーに参加した際には、厳しい評価を率直にフィードバックしていたのが印象的ですね。約1か月の滞在に関わらず、帰る時には地元の方から「もう帰っちゃうの?」と言われて、涙のお別れをするなど、地元の方々と非常によい付き合いができていたと思います。

業務の面でも非常に助かりました。やはり職員数に対して業務量が多く、手を付けられずにいる業務もたくさんあります。そこをインターン生たちが積極的に拾ってくれたことは有難かったです。また、若い感性を活かして、職員だけでは思いつかないアイデアをたくさん出していただけたと思います。

今回来ていただいた4人のインターン生たちは、想像以上に優秀な方ばかりで本当に驚きました。今後もイベントの時期などに合わせて、インターン生の受け入れを続けていく予定です。

まとめ

ここまでインターンシップの活用事例を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。十和田奥入瀬観光機構様のケースでは、インターンシッププログラムを通して、学生自身の成長だけではなく、DMO職員のモチベーションアップや、地域住民との繋がりという面でも非常に良い影響があったのではないかと思います。

ぜひ今後の人材活用と人材育成の参考にしていただければ幸いです。

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